Monday, February 02, 2009

今橋映子著フォト・リテラシー

報道写真が好きだ。好きだけれど、魅せられるけれど何かがいつも 心にくすぶって重い澱のように残ったままでいる。

 魅せられる自分がいるのにそういう自分にうしろめたさを感じ 悲惨な現場を美しいと感じる自分に反発を感じていた。 それを言葉に出来ないでいた。 

 今橋映子はその著書、「フォト・リテラシー」の中で、彼女もまた スーザン・ソンタグの「他者への苦痛のまなざし」から言葉を 紡いでそれが何で何故なのかを解いてみせている。

 美しいと感じる自分に後ろめたさを見る自分。
その事に対して 写真は「美しい棘」に成り得る。

逆には優れた報道写真 ー決定的瞬間に限らず、
対象の選択と技法が、明確な 思考あるいは正確な取材に裏付けられ、
しかも対象への 共感を失わない写真 ーこそが、歴史と人間の様態を、
記憶の断片として定着し得るとすら言える。 

 という。

そしてそれが「思考の契機としての写真」を肯定する。 
であるなら、悲惨さに美を感じてうしろめたさを抱くことにすら 
意味があるということだろう。 

 なんとも深い思考に裏打ちされた写真の「読み方」でなんと 
優れた本だろう。 

 それにしても今橋映子さんってすごい才能だ。

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