昔、早稲田大学のモダンジャズ同好会に属していたことがある。
私はそこの学生ではなかったが、早稲田に入学した友だちが、
モダンジャズの好きな子がいる、
というメモを部室に残したら、ぜひ遊びにいらっしゃい
との連絡をいただいたのだ。
参加してびっくりした。
ブラインドテストといってレコードを数秒かける。
そのイントロ、最初の音を聞いて、誰がいつどこで演奏したものか
その時の演奏はトランペットは誰、ピアノは誰、レコード会社は、
などを瞬時に当てる、というゲームをする。
好き勝手にジャズ喫茶でとろとろと聞いていた私とは
まるで別世界だ。でも、その
「何となく集う」「強制も束縛もない」「いてもいなくてもいい」
という雰囲気が好きで、グループの旅行にも会合にも参加
させてもらった。
色んな遊びをした。
例えばあるプレイヤーの音を色にすると何色か。
大河内君という貴族のような名前と風貌の人が
私も好きだったマイルス・デイヴィスを
「マイルスのトランペットは黄緑」と言った。私は
音を色に例えて考えたことがなかったので、心底感心して
しまった。まさにマイルスの、崖ップチを歩いているような
緊張感溢れる音色が、黄緑、という一言に要約される
気がした。
コンパで女の人が酔っぱらったのを初めて見た。
先輩が交代でおぶって、みんなでぞろぞろと
家まで送って行った。
水が50cmくらいしかないプールに頭から飛び込んで病院に
かつぎ込まれた仲間の見舞いに登戸の方の病院まで行った。
幸い大事には至らなかったようだが。
小西さんといったか、少し猫背の長身の先輩が、どこか
放送局かテレビ局に就職が決まった、というので京王沿線
の彼の家までみんなでお祝いに行った。
スキーのバス旅行にも連れて行ってもらった。
要するに仲良しサークルのようなもの、と言ったら怒られる
だろうか。肝心のモダンジャズは前述のブラインドテスト
以外あまり記憶がない。みんなで聞いてもひとりで聞いても
要するに、モダンジャズはモダンジャズ。マイルス・デイヴィス
のトランペットもコルトレーンのサックスも聞いていれば
自分しかいなくなる。
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