Wednesday, November 22, 2006

スキポール空港で

アムステルダムのスキポール空港でロンドン行きの飛行機を
待っていた時のこと。

ふと気がつくと反対側のロビーのガラス越しに人が倒れている。
あれ、と思ったらガードマンがそばに行き、倒れている人の
様子をかがみ込んでみている。するとあとからもうひとり。
その人は倒れている男性を転がすかのように足をかけた。

私は自分がそこに倒れて足蹴にされている姿を想像してしまう。
思わずガラススクリーンの反対側ロビーに廻り、デスクに乗り出して
大声で叫んだ。
「Call the ambulance!」
覗き込んだり足蹴にしたりしてる場合じゃないだろ、と。
けんか腰の私の声に、ガードマンは「今呼んだ所ですよ」と言い、
おもむろにゴムの手袋をはめてから倒れた人の身体をゆすった。

様子をみたそのガードマンは、立ち上がり私に向かって意外な一言。
「酔っ払いです。こいつは先月もこのゲートで倒れてたんだ」
え?酔っぱらい?きちんとスーツを着て、アタッシュケースを持ち、
国際線のロビーで?

お酒の匂いがするという。ゲートは閉じられていて私のところまで
匂いはわからない。そうなんだ、、、。私は病気で倒れたのだと思い、
早く救急車を、と気が気でなかった。
でも本当に酔っぱらって寝ているのだとしたら、また先月も
同じことがあったとしたら、、、。
どんな仕事をしてどこへ行くのか、空港で意識もなく倒れてしまうほど
どこで一体飲んだのだろう?

急ぐ風でもなく上から見下ろしたり足蹴にしたことに対する憤りは
あったが、見知らぬ倒れている人間にゴム手袋をはめてから
触れる、ということは考えてみれば当然のことなのかもしれない。

倒れている人の床はしみが出来ていたから失禁もしていただろう。
酔っぱらいであれ病人であれ、国際線(といってもヨーロッパでは
電車の乗り換えのようなものか)のロビーでどこから来てどこへ
行く人かわからない、伝染性の病気にかかっているかもしれない、
そんな人に、ただかけよって身体を起こそうとするには注意が必要
なのだ、と複雑な思いだった。

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