Sunday, November 19, 2006

海へ続く道

小学校の頃、うちの前の南へ延びた道の先に海が見える、と思っていた。

ゆるい登り坂のずっと向こうにいつもきらきら光るものがあってそれが海だ、と。
「海」の上は青い空しかなく、うちの前の道は海へ続いているのだ、と。
トタン屋根の小屋か何かがあったのだと思うが 中学に通い始めて、
その道のずっと向こうにはどこまで行ってもただ家々が続いているだけ
と分かってからも坂道の先の光るものを見ると、ああ、海に続いている、と
思って心が弾んだ。


その名を聞き口にする時、心が激しくゆさぶられるひびきがある。
ロプ・ノール、タクラマカン砂漠、
コンロン、ゴビ、パミール高原、サハラ、ンゴロンゴロクレーター、
ロレンソ・マルケス、ティエラ・デル・フエゴ、、、
かつて行きたいと夢見て
ミシュランの地図を広げ、ルートをたどった地名だ。

小学校の頃、スエン・ヘディンやアフリカの大蛇の話を夢中になって読んだ。
中学に入ると紀伊国屋でミシュランの地図を買い
擦り切れるほど「読んだ」。サハラ砂漠のガスステーションに印をつけ、
ここでガソリンを補給してここで朝を迎え、この場所に留まって、、と。
あの頃の、夢中で鉛筆を走らせたルートのメモ、ノートの走り書き。
アジアハイウェイを通ってパミール高原、イスタンブールからさらに
フランスを抜けてアフリカに至る旅へ。

ノートに、スワヒリ語の単語を様々な本から書き留め、
アフリカに関する本をむさぼるように読んだ。
誰よりも先に(誰といって競争する相手も浮かばないのに)
私がアフリカの地を踏むのだ、と、
タクラマカン砂漠を通って、といつもいつも空想していた。


ある出来事があってもう私はアフリカやタクラマカン砂漠に行くことはない、
と思い資料を捨てた。夢は夢で終わる。あれほど長い間、
あれほど細かく、空想の世界で遊んだのだから、もういい。


けれど最近もしかすると状況はそんな捨てたもんでもないかもしれない、
と思う。点と点を結ぶ旅ではなく、今なら面の旅、「その場に留まる」旅も
できるのではないか。

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