Saturday, December 23, 2006

Virgin Atlanticのショーファーサービス


利用者の満足度でいつも上位に入るバージンアトランティック航空に乗った。
マイレッジの奴隷なので通常はヨーロッパに行くときもKLMでアムステルダム経由
なのだが今回は急いでいることもあって成田からロンドン直行の
バージンエアを予約。一度使ってみたいと思っていたショーファーサービスを
使うことができるというのでさっそく試すことにした。
ディスカウントのビジネスクラスだ。

行きは迎えの車が約束の時間5分前には家の前に来て待っていてくれる。
成田まで都内からほぼ一時間半。快適なドライブだ。新聞まで用意してある。
第二ターミナルのバージンカウンター前で降ろしてくれる。
ロンドンに着いてからホテルまでもサービスを受けられるのだが知人が
来てくれることになっていたので残念に思いながらも断る。

帰りホテルから空港へもショーファーサービスを使える。私はぜひ
オートバイでのショーファーサービスを利用したいと思っていた。
オートバイでの迎えは現地で予約してください、と言われ
ロンドンに着いてさっそくバージンエアーに電話する。ただ、荷物を
どうやって運ぶのかは心配だった。いとも簡単に、オートバイで○○日、○時に
ホテルに迎えを行かせます、というのだが、あまり何度もオートバイで荷物を
確実に運べるのかと念を押したので、直接ドライバーに聞いてみて、と言われる。

帰国前日にドライバーに連絡する。荷物は機内用のキャリーオンだけれど、
その他に本をどっさり買ったのでみかん箱ほどの量がある。キャリーオンも
小さいほうではない、どうやって積むのか、と聞く。
厚みもあるし、長さもあるし、それ以外に本がダンボール一杯ある、
ショルダーバッグもある、というが、あ、それくらいなら大丈夫、という。
まあ、もしだめならホテルから送ればいい、オートバイのショーファー
サービスを受けたいのだし。
オートバイの種類を聞くと、スズキの1200。赤いオートバイだよ、
とのこと。ホテルへ着いたらフロントから電話するので部屋で待っていて
良い、と言われる。

帰国当日、時間ぴったりに電話が来た。本を入れた箱にキャリーオン、
ショルダーバッグをもってフロントに行く。黒い皮のつなぎを着てピアスをした、
レーサーのようなお兄さんだった。やっぱり本は無理だろう、とホテルの
コンシェルジュに発送の依頼をしていると、持ってきてみて、大丈夫だから、
とドライバーに言われる。

ホテルの玄関を出ると、赤い大きなオートバイが待っていた。コンシェルジュも
ドアマンもそれを全部積むのか、と好奇心いっぱいでドアから出てくる。

まず後ろの私が寒くないように、と自分と同じような黒い皮のジャンパーを
コートの上から着せてくれる。オートバイに乗ったまま出国手続きをするので
パスポートをジャンパーのポケットに入れるように言われる。そして手袋をもらい、
乗っている間にドライバーと話をできるようにトランシーバを耳にかけてくれる。
それからヘルメット。完全武装した状態でオートバイの後ろに乗る。

後ろの座席の背中にキャリーオンを乗せて固定する。長さが心配だったが
全く問題ない。次に本を入れたダンボールをオートバイ左側のトランクへ。
ふたが閉まらないのを力で押し込む。次に右側のトランクにショルダーバッグを
入れる。バランスが取れないのでは?と聞くが大丈夫、との力強い返事。
ドアマンたちも感心して見ている。すべて積み込むとドアマンたちが
歓声をあげた。いざヒースロー空港へ出発。

ピアスのお兄さんは見かけだけでなく、運転技術もまったくF1レーサーだ。
オートバイは全くぶれず、非常に安定している。小型車とぶつかっても大丈夫、
と思えるほどの安心感だ。もちろんオートバイ自体が安定しているのだろう
けれど、この大きさのオートバイがこんなに安定した乗り物だったとは
知らなかった。

私を不安がらせないように、と話しかけてくれる。良く聞こえる?車を
追い越して行くけど怖かったら言って。全く心配はいらないよ。バージンエアの
ショーファーサービスをもう5年もしているし。以前はホンダの
1400に乗っててあれも良いオートバイだったけどこれにしてから3年になる。

最初は車の後ろを走っていたが、そのうちどんどん追い越してかなりの
スピードになる。沢山着ているし寒くはないし、快適なドライブだ。
30分ほどでヒースローに着く。渋滞のタクシーより断然に早い。
駐車場をぬけて、バージンエアの出国検査官のいる入り口で
私だけオートバイに乗ったまま、ドライバーが私のパスポートを
係官に差し出してそのままチェックインとなる。あとはオートバイに乗ったまま
最上階の特別入り口まで送ってくれる。何て便利、と感激する。

写真を撮らせてといったら私を写そうとする。いやオートバイと貴方を
撮りたい、といったら不思議そうな顔をした。ふつうはきっとお客が自分と
オートバイを撮って、と頼むのだろうか。彼も顔を載せたくないかもしれない
のでオートバイの写真がこれだ。

スーツを着てキャリーオンとアタッシュケースを持ったビジネスマンが
飛行機に乗り遅れないよう、オートバイでのショーファーサービスを依頼
するケースが多いのだと思う。オートバイに魅せられた体験だった。

Friday, December 15, 2006

堀江さん逮捕

過去の日記より

2006年1月23日
はらわたが煮えくり返る、というのはこのような感情をいうのだろう。
それと同時にどうすることも出来ない無力感。

堀江さんが逮捕された。パトカーがサイレンを鳴らして小菅に先導する。
誰の逮捕でサイレンなど鳴らしただろう。まさに見せしめ、いじめ
としか思えない余計な演出。たかが30才になって数年の若者に、
日本の狡猾な老人男性がよってたかって目の敵にする。まさに子供じみた
パフォーマンス。

誰か冷静に状況を見極めて、過剰な報道をいさめたり、昨日もろ手をあげて
ちやほやした政治家が今日取って返して堀江つぶしをする状況をきちんと
批判できる「大人」がいないだろうか。それも影響力のある、きちんとした
「大人」が。

堀江さんを人間的にどうこういうだけの資料は私にない。けれど彼が
してきたことの報道されている部分から判断すれば、彼が出現したこと
には大きな意味がある。彼によって社会が気づかされたこと。
マネーゲームであれ、球団であれ、慣行をおかしい、と言う人間として。

彼を生意気だ、と言う人はフジテレビの会長を含んで例外なく狡猾な、
理屈ぬきの感情人間である。小泉さんだって正義を冷静に見つめることの
出来ない癇癪もちだ。今回の検察の動きもそういった感情人間の動きに
連なる。法に触れることをしたのならそれを罰すれば良い。ただし、
法に触れるか触れないかを冷静に判断してからだ。法が正しく機能し得た
としてだが。

クリニクラウンになった娘

一枚の写真がある。長身のおだやかな顔をした年配の、といっても恐らく
50代の男性。その横にはにかむように立つ長身のほっそりした若い女性。
二人のさわやかな笑顔。暖かい雰囲気が二人を包み、お互いの心からの
信頼が伝わって来る。何故か心に残る写真。

2005年暮れにNHKの番組でクリニクラウンとして紹介された女性と
その父親の写真だ。何故このような美しい表情が可能なのだろう。父親は
がんで亡くなったという。残された娘が病院で過ごす子供達に笑顔を
見たい、とクラウンになる、という映像だった。

父親ががんで亡くなる前に撮った写真。限られた時間ということを
知ってのふたりの穏やかな表情なのだろうか。残された時間を愛おしむ心が
二人のこの寄り添いあう暖かい瞬間を記録したのだろうか、、、と思い描き、
突然いや、違う、と悟る。

病気になったことでこのすてきな雰囲気の写真が残されたのではない。
それまでの、生きて来た二人の年月がそのまま表わされているだけ。
病気になったからではなくそれまでのずっと長い間、父と娘はこのような
すばらしいきずなを保ってきたのだ。生きて来た時間、心から信頼しあう
時を過ごしてきた親子なのだ、と悟る。でなければこのような表情は
生まれない。そうやって自然に寄り添った姿が美しい。

一枚の写真がすべてを語る、そんな父と娘(もちろん写真の男性の妻であり
娘の母である女性も同じようにすてきな関係なのだろう)の心に残る
写真だった。

Wednesday, December 13, 2006

ハンス・コパーとルーシー・リー

ハンス・コパーとルーシー・リーに会いに。
某月某日

ロンドンから日帰りでアムステルダムのクリスティーズに行く。
ルーシー・リーとハンス・コパーを収集したオクトバーグコレクションが
オークションにかけられるためだ。

Easy jetという会社の安い航空券を買ったため市内から40分電車に乗り
Luton airportからの飛行機だ。朝7時にロンドンのFarringdon駅を出て
空港まで行きスキポールまで、さらにアムステルダム中央駅まで電車に乗り
そこからクリスティーズまでタクシーで。

アムステルダムのタクシーはトロリー電車や自転車、歩行者をまるで
ぬうように、というよりまるで追いかけんばかりに走っていく。
ロンドンから一緒に行った友人は、ロンドンの列車にくらべて
アムステルダムの列車が音も静かできれいでスピードがあって、と盛んに
褒めていたが、いざ路上の交通については首を振った。
何度も人や自転車を轢きそうになりそのたびに顔を見合わせた。

クリスティーズでこれはと思う作品をケースから出してもらい
窓辺で手にとってチェックする。他に日本からの女性が日本の茶陶のコレクション
を吟味している。手慣れた様子で、どこかギャラリーのバイヤーだろうか。

あまり現代陶器は慣れていないのか、ロンドンよりかなり安い見積もりだ。
コパーとリーを始め、イタリアのタイル、日本の茶陶などあらゆる種類の
陶磁器を所蔵したオクトバーグ氏とはどういった人物だったのだろうか、と
興味をそそられる。

美術館での展覧会に数多く出品してきたが、作家別やテーマ別でなく、
自分のコレクションのすべてを一同に展示したいとの希望が入れられないこと
も手放す一因と聞いた。

帰りの飛行機はオーバーブッキングのため、ボランティアで明日の便にまわって
もらえないか、と航空会社。ホテルの宿泊代と現金を渡すことで一人二人と
ボランティアが手を挙げる。しかしほとんどの人は私を含めて
明日の仕事のためか動かない。

航空会社の職員が何度もあと二人必要、あと一人、と戻ってくる。3時間も
経ってようやく最後の一人が
「いいよ、明日にまわるよ」と手を挙げると思わず残った人たちから
拍手がわいた。

ボランティアで明日の飛行機に乗ることに決めた人たちの荷物を、すでに
チェックインした大勢の荷物の中から取り出す必要があるために、
作業時間は延々と続く。
搭乗者のものと確認できない荷物があっては飛んではならないことに
なっているのだ。ようやく確認が済んでロンドンに向けて離陸したのは
夜中を過ぎていた。

ヨーロッパの国々は国というより、日帰りで都市間を移動する感覚だが、
時にこんな(安い航空運賃のためなので文句はいえない)余計な
時間を必要とする。

早稲田のモダンジャズ同好会

昔、早稲田大学のモダンジャズ同好会に属していたことがある。
私はそこの学生ではなかったが、早稲田に入学した友だちが、
モダンジャズの好きな子がいる、
というメモを部室に残したら、ぜひ遊びにいらっしゃい
との連絡をいただいたのだ。

参加してびっくりした。
ブラインドテストといってレコードを数秒かける。
そのイントロ、最初の音を聞いて、誰がいつどこで演奏したものか
その時の演奏はトランペットは誰、ピアノは誰、レコード会社は、
などを瞬時に当てる、というゲームをする。

好き勝手にジャズ喫茶でとろとろと聞いていた私とは
まるで別世界だ。でも、その
「何となく集う」「強制も束縛もない」「いてもいなくてもいい」
という雰囲気が好きで、グループの旅行にも会合にも参加
させてもらった。

色んな遊びをした。
例えばあるプレイヤーの音を色にすると何色か。
大河内君という貴族のような名前と風貌の人が
私も好きだったマイルス・デイヴィスを
「マイルスのトランペットは黄緑」と言った。私は
音を色に例えて考えたことがなかったので、心底感心して
しまった。まさにマイルスの、崖ップチを歩いているような
緊張感溢れる音色が、黄緑、という一言に要約される
気がした。

コンパで女の人が酔っぱらったのを初めて見た。
先輩が交代でおぶって、みんなでぞろぞろと
家まで送って行った。

水が50cmくらいしかないプールに頭から飛び込んで病院に
かつぎ込まれた仲間の見舞いに登戸の方の病院まで行った。
幸い大事には至らなかったようだが。

小西さんといったか、少し猫背の長身の先輩が、どこか
放送局かテレビ局に就職が決まった、というので京王沿線
の彼の家までみんなでお祝いに行った。

スキーのバス旅行にも連れて行ってもらった。
要するに仲良しサークルのようなもの、と言ったら怒られる
だろうか。肝心のモダンジャズは前述のブラインドテスト
以外あまり記憶がない。みんなで聞いてもひとりで聞いても
要するに、モダンジャズはモダンジャズ。マイルス・デイヴィス
のトランペットもコルトレーンのサックスも聞いていれば
自分しかいなくなる。